ビタミンCは種類で使い勝手も手応えも変わります。本稿では純粋ビタミンC(LAA)からAA‑2G・SAP・MAP・EAA(3‑O‑エチル)・VC‑IP/THD・APPS・VC‑DG・GO‑VCまで、 溶解性/最適pH/一般的濃度の目安/向く肌悩みを一挙に比較。目的別の選び方・使い方のコツもわかります。
ビタミンC誘導体とは?(超要点)
アスコルビン酸(ビタミンC)は不安定で酸化しやすく、角層透過性も十分ではありません。そこで安定性・浸透性・使い勝手を高めるために各種「誘導体」が使われます。 違いを大きく分けると溶解性(水溶性/油溶性/両親媒性)と、処方でのpH最適域・安定性です。


主要誘導体の早見表
名称(INCI/表示名) | 俗称 | 溶解性 | pH/処方のコツ | 一般的濃度目安 | 特徴(長所/短所) | 向く悩み |
---|---|---|---|---|---|---|
L‑ascorbic acid(LAA)/アスコルビン酸 | 純粋ビタミンC | 水溶性 | pH < 3.5、遮光・低酸素、抗酸化補助(例:フェルラ酸+ビタミンE) | 10–20% | エビデンス豊富/刺激・変色リスク | くすみ、光老化、色ムラ |
Ascorbyl Glucoside(AA‑2G/アスコルビルグルコシド) | AA‑2G | 水溶性 | pH5–6で扱いやすい | 0.5–5% | 安定・デイリー向け/変換は穏やか | 日常の透明感ケア |
Sodium Ascorbyl Phosphate(SAP/リン酸アスコルビルNa) | SAP/APS | 水溶性 | pH≧6.5で安定しやすい | 0.2–2%(日常)/≥3%(色ムラ対策) | 安定・刺激が少なめ/即効性はマイルド | ニキビ傾向、初めてのVC |
Magnesium Ascorbyl Phosphate(MAP/リン酸アスコルビルMg) | MAP/APM | 水溶性 | 中性域で安定。高濃度は溶解に注意 | 0.5–10%(推奨3%前後) | 比較的安定/手応えは穏やか | 乾燥・くすみのデイリーケア |
3‑O‑Ethyl Ascorbic Acid(EAA/3‑O‑エチルアスコルビン酸) | VCエチル | 両親媒性に近い | pH4–5.5で設計しやすい | 0.5–5%(製品により高濃度も) | 安定・使いやすい/データは増加中 | 透明感、色ムラ |
Ascorbyl Tetraisopalmitate(VC‑IP) | VC‑IP/ATIP | 油溶性 | 低刺激で処方容易 | 1–10% | まろやか/臨床データは限定的 | 乾燥・敏感寄りの美白* |
Tetrahexyldecyl Ascorbate(THD) | THD/THDA | 油溶性 | pHの自由度が高い | 1–20%+(製品差) | 低刺激・浸透期待/製品依存性あり | 敏感肌寄り、エイジング・色ムラ |
Trisodium Ascorbyl 6‑Palmitate 2‑Phosphate(APPS/パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na) | APPS(アプレシエ) | 両親媒性 | 水・油どちらの処方にもなじむ | 0.1–1%+(製品差) | 浸透性の報告/原料コスト高め | 乾燥・ハリ・透明感 |
Bis‑Glyceryl Ascorbate(VC‑DG) | VC‑DG | 水溶性 | 保湿系処方と相性良い | 1–5% | しっとり・低刺激/変換は穏やか | 乾燥小ジワ、バリア配慮 |
Caprylyl 2‑Glyceryl Ascorbate(GO‑VC/カプリリル2‑グリセリルアスコルビン酸) | GO‑VC | 両親媒性 | 保湿・皮脂対策設計に好相性 | 1–5% | 保湿型VC/医薬部外品の有効成分ではない | 乾燥×ニキビ傾向の保湿美白* |
表1:ビタミンC誘導体の比較(一般的な知見に基づく目安。実際の製品設計や法規で異なります)
個別解説
L‑ascorbic acid(LAA)
最も研究蓄積が豊富。pH3.5未満×10–20%の設計で手応えが出やすく、フェルラ酸+ビタミンEと組み合わせると安定性・光防御が向上します。 刺激・変色リスクがあるため、遮光・エアレス容器を選び、色が黄〜茶に変わったら買い替えを。
Ascorbyl Glucoside(AA‑2G)
ビタミンCにブドウ糖を結合して安定化。皮膚酵素で徐々にCへ変換されるため、扱いやすくデイリー向け。 一般的な配合は0.5–5%。
Sodium Ascorbyl Phosphate(SAP)
pH6.5以上で安定しやすい水溶性誘導体。刺激が少なめで、5%前後の臨床報告もありニキビ傾向の肌に選ばれることが多いです。 日常使いは0.2–2%程度から。
Magnesium Ascorbyl Phosphate(MAP)
中性域で比較的安定。透明感ケアに向く反面、高濃度は溶解・テクスチャーが難しくなることがあります。目安は0.5–10%。
3‑O‑Ethyl Ascorbic Acid(EAA)
安定性が高く、pH4–5.5で設計しやすい両親媒性タイプ。色ムラ・くすみに使いやすい選択肢で、0.5–5%が一般的です。
Ascorbyl Tetraisopalmitate(VC‑IP)
油溶性で低刺激。乾燥・敏感寄りの肌と相性が良い一方、研究の蓄積はLAAほど多くありません。目安1–10%。
Tetrahexyldecyl Ascorbate(THD)
油溶性でpH自由度が高く、穏やかな使い心地。高濃度採用の製品例もあります。目安1–20%+(製品差)。
APPS(パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na)
両親媒性で水・油どちらの環境にもなじみやすい設計。浸透性の報告があり、乾燥やハリ、透明感を多面的に狙うときの選択肢。目安0.1–1%+。
Bis‑Glyceryl Ascorbate(VC‑DG)
保湿力を付与した水溶性タイプ。ビタミンC特有のつっぱり感を抑えつつ、日常のエイジング初期サインにアプローチ。目安1–5%。
Caprylyl 2‑Glyceryl Ascorbate(GO‑VC)
グリセリン+オクタノール由来の両親媒性。保湿と皮脂対策を両立させたい設計に向きます。目安1–5%。


目的別の「正解」早わかり
- 美白*・くすみ全般: 即効性重視ならLAA(10–20%)。デイリーの扱いやすさならEAAまたはAA‑2G。
- 毛穴の黒ずみ・ざらつき: 朝にLAA+日焼け止め(フェルラ酸+E配合のC美容液なら安定性・光防御◎)。
- ニキビ傾向: 刺激が少なめで臨床もあるSAP(〜5%)が選択肢。
- 敏感・乾燥寄り: まろやかなVC‑IP/THDや保湿型VC‑DG。
- 浸透性と使い勝手のバランス: 両親媒性のAPPS。
*「美白」は「メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ」ことを指します。
使い方・併用・パッケージのコツ
- 朝に使う価値: LAAはフェルラ酸+ビタミンE配合だと光防御が底上げ。必ず日焼け止めとセットで。
- pH管理: LAAはpH<3.5が目標。EAAはpH4–5.5で安定、SAPはpH6.5以上が安定傾向。
- 容器: 遮光・エアレス推奨。色が黄〜茶に変わったら買い替え。
- 濃度の目安: LAA10–20%/AA‑2G0.5–5%/SAP0.2–2%(≥3%で色調ケア)/MAP0.5–10%など。製品指示に従うこと。
- 注意: アスコルビルパルミテートは安定化目的では有用だが、主役のCとしてはやや非力。
よくある質問(FAQ)
THDとVC‑IPは同じ?
INCIは別(THD=Tetrahexyldecyl Ascorbate、VC‑IP=Ascorbyl Tetraisopalmitate)ですが、いずれも油溶性の“穏やかなVC”という立ち位置。商品選定時は成分名(INCI)を確認しましょう。 APPS(アプレシエ)の特長は?
水にも油にもなじむ両親媒性で、浸透性に関する報告があります。表示名称はパルミチン酸アスコルビルリン酸3Na。 L‑アスコルビン酸の最適pHと濃度は?
pH3.5未満×10–20%が古典的な目安。フェルラ酸+ビタミンE配合で安定性・光防御が向上します。 ニキビにはどの誘導体が向く?
SAP(〜5%)が選択肢。刺激が少なめでデイリー使いにも向きます。


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※本記事は一般的情報であり、個別の効果を保証するものではありません。異常を感じた場合は使用を中止し、専門家にご相談ください。